「夜中に急に息が苦しくなった」「熱が四十度から下がらない」。新型コロナウイルスの症状が激化すると、恐怖のあまり即座に一一九番通報を考えたくなるものですが、ここで一度冷静に「重症度」を自己判断する知識を持つことは、自分自身の適切な受診、そして救急医療の維持という観点から極めて重要です。まず、多くの人が「何科に行けばいいのか」と迷うのは、症状がまだ自分の足で動ける範囲、つまり軽症から中等症Ⅰの段階です。この時期は、日中であれば保健所や市のリストにある内科、夜間であれば休日夜間急病診療所が担当となります。しかし、もはや特定の「診療科」を選ぶ段階を越え、直ちに救急車を呼ぶべき「レッドフラッグ(危険信号)」が存在します。それは、顔色が明らかに土気色になっている、唇が紫色に変色している(チアノーゼ)、呼吸が浅く速くなり話すことも困難である、あるいは意識が朦朧として受け答えが成立しないといった状態です。これらは血液中の酸素が致命的に不足しているサインであり、自宅療養やクリニックの受診では対応不可能な「重症」の領域です。この場合は、迷わず救急車を要請してください。救急隊員は、現在の症状から最適な受け入れ先となる「救急科」や「集中治療室(ICU)」を備えた大規模病院を選定します。一方で、これらの兆候がないにもかかわらず、単に「不安だから」という理由で救急車を呼ぶことは、本当に命が危ぶまれている他の患者の機会を奪うことになります。受診の判断に迷った際の心強い味方が、全国共通の電話相談窓口「#7119(救急安心センター事業)」です。ここに電話をかけると、看護師や医師などの専門家があなたの症状を聞き取り、今すぐ救急車を呼ぶべきか、それとも明日の朝を待って近所の内科へ行くべきかを客観的にアドバイスしてくれます。特に深夜の急変では、この電話一本が「何科に行くか」という迷いを断ち切り、最も安全な行動を選択させてくれます。新型コロナは、時に急速に病状が進行する恐ろしい側面を持っていますが、正しく恐れ、適切なレベルの医療機関にアクセスする冷静さこそが、最終的に自分を守る武器となります。軽症なら内科へ、中等症なら発熱外来へ、そして重症なら救急へ。このフェーズに応じた受診先の切り替えを頭に入れておくことが、パニックを回避し、命を繋ぐための最短のロードマップとなるのです。
救急車を呼んでしまう前に知るべき重症度と受診科の判断