それは、冬の乾燥が本格的になり始めたある月曜日の朝のことでした。朝食を一口食べようと大きく口を開けた瞬間、右側の口の端が「ピリッ」と裂けるような感触があり、鏡を見ると真っ赤に血が滲んでいました。当初は「ただの乾燥だろう」と考え、手元にあった保湿用のバームを何度も塗り直してしのいでいましたが、これが長い闘いの始まりだとは夢にも思っていませんでした。数日が経過しても傷口は塞がるどころか、次第に黄色いかさぶたのようなものが付着し、周囲の皮膚までガサガサに荒れていきました。笑うことも、お喋りを楽しむこともできず、常に口元を気にしながら過ごす毎日は、想像以上に精神的なストレスとなりました。インターネットで「口角炎、何科」と検索すると、皮膚科や内科、歯科といった選択肢が並んでおり、私はどこへ行くべきか数日間迷いました。もし歯科へ行って「これは皮膚の問題だ」と言われたら二度手間になるし、内科で大掛かりな血液検査をされるのも億劫でした。結局、私は目に見える皮膚の異常を治してほしいという一心で、近所の皮膚科クリニックを予約することにしました。診察室で先生は、私の口角の状態を拡大鏡でじっくりと観察し、「これはただの乾燥ではなく、カンジダというカビが少し悪さをしていますね」と仰いました。カビという言葉に少なからずショックを受けましたが、先生は続けて「疲れている時や体調を崩している時には、誰の肌にでもいる菌が増えてしまうことがあるんですよ。不潔にしているからではありません」と優しく説明してくれました。その言葉に、どこか自分を責めていた気持ちがふっと軽くなったのを覚えています。処方されたのは、菌を抑える薬と、炎症を鎮める薬を混ぜ合わせた特製の塗り薬でした。そして先生からは、洗顔の際にゴシゴシ擦らないことや、患部を舌で舐める癖を止めることなど、具体的なアドバイスも受けました。驚いたことに、薬を塗り始めてからわずか二日後には、あんなに頑固だった出血と痛みが嘘のように引いていきました。一週間が経つ頃には、皮膚の赤みも完全に消失し、元通りの滑らかな口元に戻ることができました。病院へ行く前は、たかが口角の荒れで大げさかもしれないという躊躇いもありましたが、結果的に専門医の診断を仰いだことが、苦痛を最短で終わらせる唯一の正解だったのだと痛感しています。もしあのまま自己流のケアを続けていたら、今頃はさらに悪化した炎症に悩まされていたことでしょう。口の端という小さなパーツであっても、そこには専門的な知識が必要な「病気」が潜んでいます。同じように痛みを我慢している方がいたら、どうか迷わず皮膚科の扉を叩いてほしいと思います。専門家の確かな処置は、身体だけでなく、心まで健やかにしてくれる最高の薬なのですから。