足の健康状態は、単に筋肉や関節の良し悪しだけで決まるものではありません。血管というインフラが健全であってこそ、足は本来の機能を果たします。動脈硬化が進行して足の血流が滞り始めると、初期症状として足の冷え、しびれ、そして歩行時の痛みなどが現れます。しかし、これらの症状は腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった整形外科疾患の症状と酷似しているため、多くの人が整形外科を受診し、そこで異常なしと言われてそのままにしてしまうという問題が起きています。もし足に違和感があり、整形外科で納得のいく説明が得られなかった場合、次に受診すべきは間違いなく循環器内科や血管外科です。血管の専門科では、ABI検査という極めて簡便で痛みもない検査を最初に行います。これは両腕と両足首の血圧を同時に測るもので、腕の血圧に比べて足の血圧が低い場合、足の血管のどこかが狭くなっている可能性が非常に高いと判断されます。受診の目安としては、五十メートルから百メートル程度歩いただけでふくらはぎが痛くなる、足の指が常に紫色っぽくなっている、足の傷が数週間経っても治らないといった症状がある場合です。また、脈を自分でチェックすることも有効な見極め方です。足の甲の中央あたりや、内くるぶしの後ろ側にある血管の拍動を指で触れてみて、左右で強さが明らかに違ったり、脈が触れなかったりする場合は、すぐに受診が必要です。循環器内科では血管の硬さを示す指標も測定できるため、自分の血管が実年齢に比べてどれくらい老化しているかを知ることができます。初期の動脈硬化であれば、食事の塩分を控え、動物性脂肪を減らし、禁煙を徹底するといった生活改善に、少量の内服薬を加えるだけで劇的な効果が得られます。逆に発見が遅れ、血管が完全に詰まってしまうと、カテーテルで風船を膨らませたりステントを入れたりする処置が必要になります。さらに進行すればバイパス手術という大きな手術を避けることができません。血管は沈黙の臓器の一部です。痛みや冷えという症状が出ている時点で、それはもはや沈黙を破った末の叫びなのです。その叫びを聞き逃さず、迅速に専門医の診断を仰ぐことが、自分の足で人生を歩み続けるための唯一の道と言っても過言ではありません。検査を受けることは、自分の全身の健康状態を再点検する絶好の機会でもあります。