頬がリンゴのように真っ赤に染まることからその名で親しまれている伝染性紅斑、通称りんご病は、ヒトパルボウイルスB19というウイルスによって引き起こされる感染症です。主に春から初夏にかけて流行し、幼稚園や小学校などの集団生活を送る子どもの間で広がることが多いですが、大人にも感染する可能性があります。この病気の最大の特徴は、多くの人が「病院へ行くべきか」と迷うタイミングで、すでに感染力のピークが過ぎているというパラドックスにあります。りんご病の症状は二段階に分かれます。第一段階は、ウイルスが体内で増殖している潜伏期間の終盤で、微熱や鼻水、倦怠感といった、ごく軽い風邪のような症状が現れます。実はこの時期が最もウイルスの排出量が多く、周囲にうつす力が最強なのですが、本人も周囲もまだりんご病であることに気づきません。そして第二段階として、一度熱が下がった数日後に、突然頬が赤くなり、続いて腕や太ももにレース状あるいは網目状の発疹が現れます。この発疹を見て初めてりんご病だと自覚するのですが、医学的には発疹が出た時点ですでに抗体が作られており、他人にうつす心配はほぼなくなっています。そのため、元気であれば病院へ行く必要はないのではないかという議論が生まれます。しかし、病院を受診すべき理由は明確に存在します。第一の理由は、他の重篤な疾患との鑑別です。子どもの発疹を伴う病気には、溶連菌感染症や風疹、麻疹、川崎病など、早期の薬物治療や厳重な経過観察が必要なものが多く含まれます。保護者が自分だけでりんご病だと決めつけ、実は抗生物質が必要な溶連菌感染症だった場合、後から腎炎などの合併症を招く恐れがあります。医師の目による診断を受けることは、不必要なリスクを回避するための安全策です。第二の理由は、合併症の確認です。通常は軽症で済むりんご病ですが、稀にウイルスが赤血球を作る細胞に影響を与え、重度の貧血(溶血性貧血)を引き起こすことがあります。特にもともと貧血気味の子や血液の持病がある場合は、発熱や発疹に伴って顔色が青白くなっていないかを確認するために受診が必要です。また、大人がかかった場合は激しい関節痛を伴うことが多く、日常生活に支障をきたすほど痛む際には鎮痛剤の処方を受けるために内科や整形外科を受診すべきです。病院へ行くべきか迷った際のガイドラインとしては、発疹だけでなく三十八度以上の熱が続いている、食欲がない、ぐったりしている、あるいは手足の痛みが強いといった「全身症状」を基準にしてください。また、学校や園の登園基準を確認するためにも、一度確定診断を受けておくことが社会的なマナーとしても重要です。りんご病自体に特効薬はなく、治療は対症療法が中心となりますが、医師から「もう感染力はありません」というお墨付きをもらうことは、看病する親にとっての精神的な安心感に直結します。何より、周囲に妊婦がいる場合は事態が深刻です。妊婦がりんご病にかかると胎児に重篤な影響を及ぼす可能性があるため、身近な妊婦への情報提供や、自身の感染状態の把握のために医療機関を利用することは、公衆衛生上の大きな意義を持っています。
伝染性紅斑いわゆるりんご病の基礎知識と病院受診を検討すべき判断基準