私たちの体は、言葉を発しなくても様々なサインを通じて健康状態を教えてくれます。特に夏場において、熱中症の危険度を早期に察知するために非常に役立つのが、「トイレの回数」と「尿の色」という二つの指標です。これらを日々セルフチェックする習慣をつけることで、重症化する前に適切な対策を講じることが可能になります。まず、最も分かりやすい危険信号は、トイレの回数が普段より明らかに減り、尿の色が濃い黄色や茶色に近くなることです。これは、体内の水分が著しく不足している典型的な脱水症状のサインです。汗として大量の水分が失われているにもかかわらず、補給が追いついていないため、腎臓が体内の水分を少しでも保持しようと、尿を最大限に濃縮して排出している状態です。この状態を放置すれば、熱けいれんや熱疲労、さらには意識障害を伴う熱射病へと進行する危険性が非常に高くなります。このようなサインに気づいたら、涼しい場所へ移動し、直ちに経口補水液などで水分と塩分を補給する必要があります。一方で、見過ごされがちなのが、その逆のパターンです。つまり、「トイレの回数が異常に増え、尿の色が水のように無色透明に近い」という状態です。一見すると、水分が足りている証拠のように思えるかもしれませんが、これもまた注意が必要なサインです。これは、脱水を恐れて水やお茶だけを大量に飲んだ結果、体内の塩分濃度が低下し、体が水分を保持できなくなっている「水中毒」の初期症状である可能性があります。体は塩分濃度を保つために水分を排出し続けているだけで、細胞レベルでは水分不足、つまり「かくれ脱水」に陥っている危険性があるのです。この場合、だるさやめまいといった熱中症の症状を伴うことが多くあります。健康な状態の尿は、薄い麦わら色で、一日の回数も極端に多くも少なくもないはずです。日頃から自分の尿の状態を意識し、「減って濃くなる」のも「増えて無色になる」のも、どちらも体からの警告であると理解しておくことが、熱中症予防の第一歩となります。