その日の朝、三歳になる息子が保育園に行くのを珍しく嫌がったとき、私は単なる甘えだろうと軽く考えていました。しかし、着替えをさせている最中、息子の足の甲に数個の小さな赤いポツポツを見つけた瞬間、嫌な予感が胸をよぎりました。前日に園の連絡帳で「手足口病が流行っています」という文字を目にしていたからです。昼過ぎに保育園から電話があり、熱が三十八度を超えたとの知らせを受けて迎えに行くと、朝は数個だった足の甲の赤みは、まるで赤いインクを散らしたように無数に増え、足首のあたりまで広がっていました。帰宅後、息子は「足が痛い、ムズムズする」と泣き出し、靴下を脱ぎ捨てて自分の足の甲を必死に床に擦り付けようとしていました。鏡で確認すると、手のひらや口の中よりも、足の甲の症状が最も激しく現れていました。皮膚が薄いせいか、一つ一つの発疹がパンパンに膨れ上がり、熱を持っているのが手を通しても伝わってきました。小児科の先生からは「大人が思う以上に、子供にとって足の甲の発疹は不快感が強いんですよ」と教わりました。そこからの数日間は、まさに痒みと痛みとの戦いでした。息子は寝ている間も無意識に足の甲を反対の足で蹴るようにして掻こうとするため、私は保冷剤を薄いタオルで包み、足の甲を冷やしてあげることで少しでも神経を落ち着かせるよう努めました。冷やすと少しだけ泣き止む息子の姿を見て、この不気味な赤みがどれほど熱く、不快なものであるかを痛感しました。特に困ったのは清潔の保持です。お風呂に入れると身体が温まり、さらに痒みが増してしまうため、ぬるめのシャワーでサッと流すだけに留め、足の甲は泡で優しく包むように洗いました。発症から三日目、足の甲の赤みはピークを迎え、一部の水疱は少し濁ったような色に変わりました。この時期、息子は歩くことさえ拒むようになり、移動はすべて抱っこでした。足の甲に少しでも布が触れるのが嫌なようで、真夏でしたが家の中では裸足のまま過ごさせました。五日目を過ぎる頃、ようやく熱が下がり、あんなに鮮やかだった足の甲の赤みも、次第に枯れたような茶色へと変化していきました。皮が剥け始めたときは「また別の病気か」と驚きましたが、それも治癒に向かっている証拠だと聞き、ようやく胸を撫で下ろしました。一週間の看病を終えて振り返ると、手足口病という名前からは想像もできないほど、足の甲の症状が親子の精神を削るものであることを知りました。口の中の痛みで食事が摂れない辛さは有名ですが、足の甲に現れる視覚的な衝撃と執拗な痒みもまた、この病気の恐ろしい側面です。今では元通りになった息子の綺麗な足の甲を見ながら、健康であることのありがたさを噛み締めています。あの夏の激闘は、私にとって子供の病気と真剣に向き合う、忘れられない経験となりました。