その朝、カーテンを開けて息子の顔を見た瞬間に感じた違和感は、母親としての直感でした。左右の頬が、まるで誰かに軽く叩かれたかのように、あるいは外で冷たい風に長時間吹かれた後のように、鮮やかなピンク色に火照っていたのです。本人は至って元気で、朝ごはんのおにぎりを頬張りながらいつも通りにふざけていましたが、熱を測ると三十七度二分と微熱がありました。インターネットで検索すると、すぐに「りんご病」という言葉がヒットしました。そこには、発疹が出た時にはもう感染力がなく、病院へ行ってもすることがない、といった内容が多く書かれていました。正直なところ、仕事の調整が難しい日だったこともあり、私は一瞬「このまま登園させてもいいのではないか」という誘惑に駆られました。しかし、もしこれが違う病気だったらという不安が拭えず、結局、予約を取って小児科へと向かいました。診察室で先生は息子の腕や足を丁寧に見ると、「あ、ここにもうっすらとレース状の発疹が出ていますね」と教えてくれました。自分では気づかなかったのですが、太ももに細かな網目模様のような赤みが広がっていたのです。先生からは、典型的な伝染性紅斑であること、そして、すでに感染のピークは過ぎているので、明日から熱がなければ登園して構わないと言われました。私はそこで、「病院に来る必要はなかったのでしょうか」と思い切って尋ねてみました。すると先生は真剣な表情で、「いいえ、お母さんが連れてきてくれたのは正解ですよ」と仰いました。今、地域では溶連菌も流行っており、喉の検査をしなければ判別がつかないケースがあること、そして何より、家族や周囲に妊婦さんがいないかを確認することが、この病気では何よりも大切だと説明されました。りんご病のウイルスは、お腹の赤ちゃんに貧血を引き起こすリスクがあるという話を聞き、私は自分の安易な判断を恥じました。幸い、私の周りに妊婦はいませんでしたが、もし知らずに登園させて、お迎えに来ていた別の保護者の妊婦さんにうつしてしまっていたら、と思うとゾッとしました。病院での診察料と数時間の待ち時間は、その「安心」と「社会的な責任」を果たすためのコストだったのだと納得できました。帰宅後、息子は少し痒がりましたが、処方された保湿剤を塗ると落ち着き、二日後には頬の赤みも引いていきました。あの時、迷いながらも病院へ行ったことで、私は「これはもううつらない病気だ」という確信を持って生活を再開できました。病院へ行くべきかどうかという迷いは、育児をしていれば何度も訪れます。しかし、特に発疹のように目に見える異変があるときは、自分の目だけでなく専門家の目を借りることが、結果として最短で平穏な日常に戻るための近道なのだと、真っ赤な頬の息子を見守りながら痛感した出来事でした。
子どもの頬が急に赤くなった朝に私が直面したりんご病の迷いと確信