「つばを飲み込むのも激痛」「カミソリの刃を飲み込むようだ」と表現されるほどの、強烈な喉の痛みと、38.5度を超えるような高熱が、突然現れた場合。それは、単なる風邪ではなく、「A群β溶血性連鎖球菌」という細菌による、「溶連菌感染症」の可能性があります。この病気は、特に子どもの間で流行しますが、もちろん、大人も感染し、しばしば重い症状に苦しめられます。溶連菌感染症が疑われる場合、受診すべき診療科は、大人は「内科」または「耳鼻咽喉科」、子どもは「小児科」です。溶連菌感染症の喉の所見は、非常に特徴的です。喉の奥、特に口蓋垂(のどちんこ)の両脇にある扁桃腺が、真っ赤に、そして大きく腫れあがり、その表面に、白い点々とした膿(白苔)が付着していることが多くあります。また、舌の表面が、赤くブツブツになり、見た目がイチゴのように見える「いちご舌」や、喉の奥の天井部分(軟口蓋)に、赤い点状の内出血が見られることも、診断の重要な手がかりとなります。喉の症状と前後して、体にも、紙やすりのようにザラザラとした、細かい赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」という状態になることもあります。この病気で、最も重要なのは、原因が「細菌」であるため、治療には「抗生物質」が、絶対的に必要であるという点です。医療機関では、喉の粘液を綿棒で採取する、迅速診断キットを用いて、その場で診断を確定させ、直ちに抗生物質の処方を行います。ペニシリン系の抗生物質を、通常10日間、服用します。抗生物質を飲み始めると、熱や喉の痛みといった、つらい症状は、2~3日で劇的に改善しますが、ここで自己判断で薬をやめてしまうのは、絶対に禁物です。症状が治まっても、喉の奥に生き残った少数の菌が、数週間後に、心臓に障害をきたす「リウマチ熱」や、腎臓に炎症が起こる「急性糸球体腎炎」といった、重篤な合併症を引き起こす可能性があるからです。処方された抗生物質を、指示された期間、最後まで、確実に飲み切ること。これが、溶連菌感染症の治療において、何よりも重要な約束事です。