病気・治療法・薬の基礎知識を丁寧に解説

医療
  • 女性特有のめまい、更年期障害と婦人科

    医療

    40代後半から50代にかけての女性が、原因のはっきりしない、ふわふわとしためまいや、立ちくらみに悩まされる場合、その背景には「更年期障害」が隠れている可能性があります。この年代の女性の体は、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が急激に減少し、ホルモンバランスが大きく揺らぎます。このエストロゲンの減少は、脳の視床下部にある自律神経の中枢に直接影響を及ぼし、そのバランスを乱してしまうのです。自律神経は、血圧や心拍数、体温などをコントロールしている重要なシステムです。このバランスが崩れると、血管の収縮や拡張のコントロールがうまくいかなくなり、血圧が不安定になって、立ちくらみや、ふわふわとしためまいを引き起こしやすくなります。更年期障害によるめまいは、単独で現れることは少なく、多くの場合、他の多彩な症状と共に現れるのが特徴です。代表的なのが、突然顔がカッと熱くなる「ホットフラッシュ」や、大量の汗をかく「異常発汗」です。その他にも、「肩こり、頭痛、疲労感、不眠、気分の落ち込み、イライラ、不安感」といった、身体的・精神的な不調が複合的に現れます。もし、めまいと共に、これらの症状が複数当てはまる場合は、更年期の不調を疑い、「婦人科」を受診することを検討するのが良いでしょう。婦人科では、問診で症状を詳しく聞いた上で、血液検査で女性ホルモンの値を測定し、更年期障害の診断を行います。治療としては、減少した女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」が非常に有効です。HRTは、めまいだけでなく、ホットフラッシュや気分の落ち込みといった他の更年期症状も、同時に改善する効果が期待できます。その他、症状に合わせて漢方薬や自律神経調整薬などが用いられることもあります。年のせいだと我慢せず、専門医に相談することで、つらい時期をより快適に乗り越えることが可能です。

  • まとめ。受診先に迷ったら総合診療科という選択肢

    医療

    これまで、症状別に、様々な専門診療科の役割について見てきました。しかし、現実には、「頭痛とめまいと、肩こりが全部ひどい」「微熱と、腹痛と、気分の落ち込みが続いている」といったように、症状が複数の科にまたがっていたり、どの症状が一番つらいのか、自分でもよく分からなかったりするケースも、少なくありません。あるいは、近所に、適切な専門科のクリニックがない、という場合もあるでしょう。そんな時に、非常に頼りになるのが「総合診療科(総合内科)」という選択肢です。総合診療科は、特定の臓器や疾患に専門を限定せず、年齢や性別を問わず、患者さんが抱える、あらゆる健康上の問題を、総合的な視点から、診断・治療する専門家です。いわば、「病気の探偵」のような存在であり、断片的な症状の中から、隠れた病気の全体像を、見つけ出すトレーニングを積んでいます。総合診療科の医師は、まず、患者さんの話を、時間をかけて、じっくりと聞く「全人的な問診」を重視します。現在の症状だけでなく、過去の病歴、家族歴、生活習慣、仕事の内容、さらには、心理的な背景に至るまで、幅広い情報を集め、それらをパズルのピースのように組み合わせながら、診断への仮説を立てていきます。そして、その仮説を検証するために、必要な検査を、効率的に計画し、実施します。その結果、診断が確定し、治療が可能な場合は、総合診療科医自身が、主治医として治療を継続します。例えば、高血圧や糖尿病といった、一般的な内科疾患の管理は、総合診療科の重要な役割の一つです。一方で、もし、診断の結果、より専門的な知識や技術を要する、高度な治療が必要であると判断された場合には、総合診療科医は、その病気の治療に最も適した、専門診療科(循環器内科、消化器外科、リウマチ科など)の、専門医へと、責任を持って、スムーズに橋渡しをしてくれます。この、医療の「交通整理」と「水先案内人」としての役割こそが、複雑化する現代医療において、総合診療科が果たす、最も大きな役割なのです。どの科に行けばいいか、本当にわからない。そんな時は、一人で悩まず、まず、総合診療科の扉を叩いてみてください。そこから、きっと、あなたの問題解決への道筋が、開けていくはずです。