病気・治療法・薬の基礎知識を丁寧に解説

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  • 甲状腺の不調を放置しないで!女性に伝えたい健康の話

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    疲れやすい、むくみが取れない、なぜかイライラする。こうした日常的な不調を感じたとき、「いつものことだから」「忙しいから仕方ない」と自分に言い聞かせて、つい我慢してしまう女性は多いのではないでしょうか。しかし、もしその原因が甲状腺の機能異常にあるとしたら、放置することは将来の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。例えば、甲状腺ホルモンが過剰になるバセドウ病などを治療せずにいると、心臓に常に大きな負担がかかり続けることになります。その結果、不整脈や心不全といった深刻な心臓病を引き起こすリスクが高まります。また、骨の代謝が過剰に促進されるため、骨がもろくなる骨粗しょう症を若いうちから発症することもあります。逆に、甲状腺ホルモンが不足する橋本病などを放置した場合も、さまざまな問題が生じます。体全体の代謝が低下するため、血液中のコレステロール値が上昇し、動脈硬化が進行しやすくなります。これは、将来的に心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める要因となります。また、妊娠を希望する女性にとっては、甲状腺機能の低下が不妊や流産の原因になることも知られており、見過ごすことはできません。さらに、甲状腺ホルモンは精神状態にも深く関わっています。機能低下症による無気力や抑うつ症状は、うつ病と誤解され、適切な治療を受けられないまま長く苦しむことにもなりかねません。甲状腺の病気は、適切な治療を受ければ、ホルモンバランスをコントロールし、健常な人と変わらない生活を送ることが十分に可能です。大切なのは、自分の体の小さなサインに耳を傾け、早期に医療機関を受診することです。あなたのその不調は、決して気のせいではありません。将来の自分のために、そして大切な家族のために、勇気を出して一歩を踏み出すことが何よりも重要なのです。

  • その症状は内科?婦人科?更年期で迷った時の判断軸

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    更年期に現れる症状は個人差が大きく、非常に多彩です。そのため、自分の不調が本当に更年期によるものなのか、それとも別の病気が隠れているのか、判断に迷うことがよくあります。特に、動悸やめまい、高血圧といった症状は、内科系の疾患とも共通するため、何科を受診すべきか悩む大きな原因となります。ここで一つの判断軸となるのが、症状が「月経周期と連動しているか」という点です。もし、不調の波が月経の周期に合わせて強くなったり弱くなったりするようであれば、女性ホルモンの影響、つまり更年期が関連している可能性が高いと考えられます。例えば、生理前になると特にイライラがひどくなる、排卵期あたりに頭痛がするなど、周期性が見られる場合は、まず婦人科に相談してみるのが良いでしょう。一方で、月経周期とは全く関係なく、症状が持続的に現れる、あるいは悪化していく場合は、他の病気の可能性も視野に入れる必要があります。例えば、急に激しい動悸が起こる、胸に痛みを感じるといった場合は、循環器内科で心臓の検査を受けることが優先されます。また、体重が急激に減少する、異常に喉が渇くといった症状があれば、糖尿病などを疑って内科を受診すべきです。甲状腺機能の異常も、ほてりや倦怠感など更年期と似た症状を引き起こすため、血液検査で確認することが重要です。一番良いのは、まずかかりつけの内科医に相談し、全身の状態をチェックしてもらうことです。内科医は総合的な診断のプロフェッショナルであり、検査の結果、内科的な疾患が見つからなければ、「婦人科で一度相談してみては」と適切なアドバイスをしてくれるはずです。自己判断で「これは更年期だから」と決めつけず、まずは体の危険なサインを見逃さないためにも、内科的なチェックを受けるという視点を持つことが、安心して更年期を乗り越えるために非常に大切です。

  • 大人のりんご病、頬の赤みよりつらい関節痛

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    子どものりんご病の代名詞とも言える、鮮やかな「りんごほっぺ」。しかし、大人がりんご病に感染した場合、この頬の赤い発疹は、必ずしも主役ではありません。むしろ、多くの大人を苦しめるのが、発疹と共に出現する、あるいは、発疹よりも強く現れる、耐え難い「関節痛」や「関節炎」です。この関節症状は、大人のりんご病の、最も大きな特徴であり、診断の手がかりともなります。関節症状は、特に女性に多く見られ、発症した大人の約60~80%に認められるとされています。痛みや腫れが現れやすいのは、手首、手指の第二関節(PIP関節)や付け根の関節(MP関節)、膝、足首といった、末梢の小さな関節です。朝、起きた時に、手がこわばって、グーが握れない、あるいは、関節が腫れて、指輪が入らなくなるといった、「朝のこわばり」を伴うのが、非常に特徴的です。この症状は、自己免疫疾患である「関節リウマチ」の初期症状と、非常によく似ています。そのため、突然の関節痛でリウマチを心配して、リウマチ科を受診したところ、詳しく調べてみたら、原因はりんご病(ヒトパルボウイルスB19感染症)だった、というケースも少なくありません。痛みは、数週間から、長い場合は数ヶ月続くこともあり、日常生活や仕事に、大きな影響を与えます。ペンが持てない、キーボードが打てない、あるいは、膝や足首の痛みで、歩くのが困難になることもあります。りんご病による関節炎は、通常、関節リウマチのように、関節の破壊や変形を引き起こすことはなく、後遺症を残さずに治癒するのが、大きな違いです。しかし、その間の症状は、非常につらいものです。関節痛が主な症状で、りんご病が疑われる場合、受診すべき診療科は、関節炎の専門家である「リウマチ・膠原病内科」や、骨・関節を扱う「整形外科」、あるいは、まずは全身を診てくれる「一般内科」が適切です。血液検査で、ヒトパルボウイルスB19に対する抗体を調べることで、診断を確定させることができます。

  • 免疫力の低下がものもらいの引き金に

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    ものもらいを繰り返す最大の原因は、体の「免疫力の低下」にあります。ものもらいの原因菌である黄色ブドウ球菌は、私たちの体に普段から存在する常在菌であり、健康で免疫力が正常に働いている状態では、感染症を引き起こすことはほとんどありません。しかし、免疫力が低下すると、この菌の増殖を抑えきれなくなり、まぶたの小さな傷や毛穴から侵入を許してしまうのです。では、私たちの免疫力を低下させる要因とは何でしょうか。最も大きな影響を与えるのが、「疲労と睡眠不足」です。仕事や勉強、育児などで忙しい日々が続き、慢性的な睡眠不足に陥ると、体は十分な休息を得られず、免疫細胞の働きが著しく低下します。夜更かしが続いた後に、決まってものもらいができるという人は、まさに体がSOSサインを発している状態と言えるでしょう。次に、「精神的なストレス」も、免疫機能に大きな影響を及ぼします。ストレスを感じると、体はコルチゾールというホルモンを分泌しますが、このホルモンが過剰になると、免疫細胞の働きを抑制してしまうのです。仕事のプレッシャーや人間関係の悩みなどが、間接的にものもらいの引き金となることは、決して珍しいことではありません。また、「不規則な食生活」も免疫力を左右します。インスタント食品や外食に偏った食事では、免疫細胞の材料となるタンパク質や、その働きをサポートするビタミン、ミネラルが不足しがちです。特に、皮膚や粘膜の健康を保つビタミンAやビタミンB群、抗酸化作用のあるビタミンCなどは、感染症予防に不可欠です。さらに、糖尿病や自己免疫疾患などの「基礎疾患」がある場合も、感染症に対する抵抗力が全体的に低下するため、ものもらいを繰り返しやすくなります。血糖コントロールが悪いと、白血球の機能が低下し、細菌と戦う力が弱まってしまうのです。ものもらいが頻繁にできる、あるいは治りにくいと感じる場合は、一度、内科などで全身の状態をチェックしてもらうことも重要です。

  • まとめ。甲状腺の不調で迷ったら、まず内科か耳鼻咽喉科へ

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    原因不明の体調不良や、首の腫れに気づき、「これは甲状腺の病気かもしれない」と感じた時、その不安を解消するための、具体的な行動指針を、ここで改めて整理してみましょう。大原則:甲状腺の病気を専門的に診るのは「内分泌内科」ですが、最初の相談窓口としては、最も身近な「一般内科」か、首の症状が強い場合は「耳鼻咽喉科」で全く問題ありません。この基本を押さえた上で、自分の症状に合わせた、よりスムーズな診療科選びの思考プロセスを、以下に示します。Step 1:主な症状は何か?まず、自分を最も悩ませている症状が何かを、明確にします。①動悸、体重減少、多汗、手の震え、イライラなど、全身の不調が中心の場合 → これらの症状は、ホルモンバランスの乱れを示唆しています。全身を総合的に診てくれる「内科」を、最初の窓口とするのが最も適しています。内科医が、血液検査でホルモンの異常を評価し、専門的な治療が必要と判断すれば、内分泌内科へ紹介してくれます。②首の腫れや、しこりが、主な症状である場合 → 喉仏の下あたりが腫れていたり、触るとコリコリしたしこりがあったりする場合は、まず、その形態的な異常を評価することが最優先です。首の診察と、超音波検査のエキスパートである「耳鼻咽喉科」を受診するのが、最も確実で、スムーズな診断に繋がります。Step 2:健康診断で異常を指摘された場合 → 健康診断の結果票を必ず持参し、かかりつけの「内科」を受診してください。検査結果の意味を解説してもらい、必要な精密検査の計画を立ててもらうことができます。Step 3:女性特有の悩みと関連している場合 → 月経不順や不妊、あるいは更年期様の症状と共に、甲状腺の不調が疑われる場合は、まず「婦人科」に相談するのも一つの方法です。婦人科医は、常に甲状腺疾患との関連を念頭に置いており、必要であれば、適切な専門科との連携を図ってくれます。甲状腺の病気は、正しい診断と、適切な治療を受ければ、多くの場合、症状を良好にコントロールし、健康な人と変わらない生活を送ることが可能です。大切なのは、一人で悩まず、専門家の助けを求める、その最初の一歩を踏み出すことです。このガイドが、その一歩を後押しできれば幸いです。

  • 大人のりんご病、何科を受診すればよいか

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    大人が、りんご病を疑う症状、例えば、頬の赤みや、レース状の発疹、そして、つらい関節痛に気づいた時、どの診療科を受診すればよいのでしょうか。症状が、皮膚と関節という、複数の領域にまたがるため、迷ってしまうのも当然です。受診すべき診療科は、どの症状が、自分にとって最もつらいか、あるいは主となっているかによって、判断するのが良いでしょう。まず、頬の赤みや、腕や足に広がった、レース状の発疹といった、「皮膚症状」が、主な悩みである場合。あるいは、診断をはっきりとさせたい場合は、皮膚の専門家である「皮膚科」が、最も適しています。皮膚科医は、りんご病に特徴的な発疹を、正確に診断し、似たような発疹を示す、他の皮膚疾患(膠原病に伴う皮疹など)との鑑別も、専門的な視点から行ってくれます。かゆみが強い場合には、かゆみ止めの外用薬や、内服薬を処方してくれます。次に、皮膚症状はそれほどでもないけれど、とにかく「関節の痛みや腫れ、朝のこわばり」が、ひどくて困っている、という場合。この場合は、関節炎の専門家である「リウマチ・膠原病内科」を受診するのが、最もスムーズです。前述の通り、大人のりんご病による関節炎は、関節リウマチと症状が非常に似ているため、リウマチ専門医による、正確な鑑別診断が不可欠です。血液検査で、リウマチ因子や、抗CCP抗体といった、関節リウマチの指標となる自己抗体を調べ、それらが陰性であることを確認し、さらに、ヒトパルボウイルスB19に対する抗体を測定することで、診断を確定させます。治療は、主に、痛みや炎症を抑えるための、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが用いられます。そして、特定の症状が突出しているわけではなく、「発熱や倦怠感といった全身症状もあり、全体的に診てほしい」という場合。あるいは、どの専門科に行けばよいか、全く見当がつかない場合は、かかりつけの「一般内科」を、最初の窓口とするのが、最も安心です。内科医が、総合的な視点から診察を行い、必要な検査を計画し、もし、より専門的な評価が必要だと判断すれば、責任を持って、適切な専門科へ、紹介してくれます。

  • 整形外科と形成外科、名前は似ているが役割は違う

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    「整形外科」と「形成外科」。この二つの診療科は、名前が非常によく似ているため、しばしば混同されがちです。しかし、その専門領域と、治療の目的は、全く異なります。この違いを正しく理解しておくことは、適切な医療を受ける上で、非常に重要です。まず、「整形外科」は、主に「運動器」の病気や怪我を扱う診療科です。運動器とは、体を動かすために必要な器官の総称で、具体的には、「骨」「関節」「筋肉」「靭帯」「腱」「神経」などが含まれます。したがって、整形外科が対象とするのは、「骨折」や「脱臼」、「捻挫」、「打撲」といった外傷(けが)や、「腰痛」、「肩こり」、「膝の痛み」といった、慢性的な痛みや変形、そして、手足のしびれなどが、その専門領域となります。治療の主な目的は、運動機能、すなわち「体を動かす能力」を、回復・維持・改善することにあります。一方、「形成外科」は、主に体の「表面」に生じた、生まれつきの、あるいは怪我や手術によって生じた、組織の異常や変形、欠損などを、機能的、かつ「整容的(見た目)」に、より正常に、より美しく修復することを専門とする診療科です。形成外科が対象とするのは、「切り傷や火傷の傷跡」、「あざ」、「ほくろ」、「できもの」、あるいは「眼瞼下垂(まぶたの下がり)」、「乳がん切除後の乳房再建」など、その範囲は非常に広いです。治療の主な目的は、損なわれた体の見た目を、可能な限り自然な状態に再建し、患者さんの社会生活における、精神的な苦痛を和らげることにあります。簡単に言うと、「整形外科」は、体の“芯”の機能を取り戻す科であり、「形成外科」は、体の“表面”の形を整える科、とイメージすると分かりやすいかもしれません。例えば、顔を強く打って、頬骨を骨折し、皮膚に大きな切り傷を負った場合、骨折の治療は形成外科医が担当し、傷跡をきれいに縫うのも、形成外科医の重要な仕事となります。もし、この怪我で、首の骨(頸椎)にも損傷が及んでいれば、整形外科医との連携が必要となります。

  • 内科とはどんな科?迷ったらまず相談を

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    数ある診療科の中で、最も守備範囲が広く、体の不調を感じた時の、最初の相談窓口として、最も頼りになるのが「内科」です。内科は、主に手術以外の方法、すなわち薬物療法や生活習慣指導などを通じて、体の内側から生じる様々な病気の診断と治療を行う、医療の根幹をなす診療科です。風邪やインフルエンザといった、日常的な急性の感染症から、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった、長期的な管理が必要な「生活習慣病」、さらには、胃炎や肺炎、気管支喘息といった、各臓器の炎症性疾患まで、その対象は非常に多岐にわたります。内科の最大の特徴は、特定の臓器に限定せず、「全身を総合的に診る」という視点を持っていることです。例えば、患者さんが「めまい」を訴えて受診した場合、内科医は、耳や脳の問題だけでなく、貧血や不整脈、あるいは自律神経の乱れといった、全身的な要因が隠れていないかを、幅広い知識の中から探っていきます。この総合的なアプローチこそが、原因がはっきりしない症状の、初期診断(プライマリ・ケア)において、内科が中心的な役割を担う理由なのです。近年、内科はさらに専門分野が細分化されており、「消化器内科」「循環器内科」「呼吸器内科」「糖尿病・内分泌内科」「腎臓内科」「リウマチ・膠原病内科」といった、専門内科が存在します。もし、自分の症状が、特定の臓器に明らかに関連していると分かっている場合(例えば、胸の痛みが心臓に由来すると感じるなら循環器内科)は、最初から専門内科を受診するのがスムーズです。しかし、「何が原因かわからないけれど、とにかく体調が悪い」という、漠然とした不調の場合や、どの専門科に行けばよいか全く見当がつかない場合は、まずは「一般内科」や「総合内科(総合診療科)」の扉を叩いてください。そこで、経験豊富な内科医が、あなたの話に耳を傾け、必要な検査を行い、診断への道筋をつけてくれます。そして、もし、より専門的な治療が必要だと判断されれば、責任を持って、最適な専門科へと、スムーズに橋渡しをしてくれるはずです。

  • 内科での診察、全身症状を伴う喉の痛み

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    喉の痛みに加えて、発熱や、咳、鼻水、頭痛、そして体中の関節が痛むといった、いわゆる「風邪」のような「全身症状」が、同時に、あるいは主体となって現れている場合。このような時は、特定の臓器に限定せず、体全体を総合的に診てくれる「内科」を受診するのが、非常に適しています。内科医は、喉の炎症を、全身に起きている、一つの感染症の、局所的なサインとして捉え、幅広い視点から、その原因を探っていきます。内科での診察は、まず丁寧な問診から始まります。喉の痛みの程度だけでなく、熱の経過や、咳、鼻水の性状、食欲や睡眠の状態、そして、家族や職場といった、周囲での感染症の流行状況などを、詳しく聞き取ります。これらの情報が、原因となっている病原体(ウイルスなのか、細菌なのか)を推測する上で、重要な手がかりとなります。次に、喉の視診に加え、聴診器で胸の音を聞き、肺炎や気管支炎を合併していないか、リンパ節の腫れがないかなど、全身の身体診察を行います。そして、必要に応じて、検査が行われます。例えば、インフルエンザが流行している時期であれば、「インフルエンザの迅速検査」が、また、喉の赤みや腫れが非常に強く、扁桃腺に白い膿が付着している場合は、溶連菌感染症を疑い、「溶連菌の迅速検査」が行われます。これらの検査は、鼻や喉の粘液を綿棒で採取し、10~15分程度で結果が判明するため、その日のうちに、診断を確定させ、原因に基づいた、的確な治療を開始することが可能です。治療は、原因がウイルスであれば、解熱鎮痛薬や、咳止め、うがい薬といった、症状を和らげる「対症療法」が中心となります。一方、溶連菌などの細菌が原因であると確定すれば、原因菌を叩くための「抗生物質」が処方されます。このように、内科は、喉の痛みという一つの症状から、その背景にある全身の状態を読み解き、適切な検査と治療へと導いてくれる、最も身近で、頼りになる医療の窓口なのです。

  • りんご病の発疹、頬以外にも現れる?

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    りんご病の最も象徴的な症状は、両頬に現れる、境界がはっきりとした赤い発疹ですが、その発疹は、頬だけに留まるわけではありません。頬の発疹が出現してから、1~2日経つと、今度は、腕や足、特にお尻や太ももといった、四肢に、レース編みや、網目模様のように見える、特徴的な「レース状紅斑(網状皮疹)」が広がっていきます。このレース状の発疹こそが、りんご病を診断する上で、頬の赤みと同じくらい、重要な皮膚所見となります。頬の赤い発疹は、数日で消えてしまうことも多いですが、このレース状の発疹は、比較的長く、1週間以上続くことがあります。そして、一度消えたように見えても、入浴や、運動、日光を浴びるといった、皮膚への刺激によって、再び赤みがぶり返すように、現れたり消えたりを繰り返すのも、大きな特徴です。大人の場合、このレース状の発疹も、子どもほど典型的ではなく、まだらな、あるいは、やや盛り上がった紅斑として、現れることもあります。かゆみを伴うことも、少なくありません。発疹が出現する1週間ほど前に、微熱や、頭痛、倦怠感といった、軽い風邪のような症状(前駆症状)が見られることもありますが、この段階では、りんご病と気づくのは、まず不可能です。実は、ウイルスが、咳やくしゃみで排出され、他人に感染させる力が最も強いのは、この前駆症状の時期です。特徴的な発疹が現れた時点では、ウイルスの排出は、ほとんど終わっており、感染力は、ほぼなくなっていると考えられています。したがって、発疹が出たからといって、学校や仕事を休む必要は、通常ありません。りんご病の発疹は、その見た目の華やかさとは裏腹に、病気が終息に向かっているサインでもあるのです。発疹が主な症状で、診断を確定させたい場合は、皮膚の専門家である「皮膚科」や、子どもの場合は「小児科」、大人の場合は「内科」を受診するのが良いでしょう。多くの場合、特別な治療は必要なく、かゆみが強い場合に、抗ヒスタミン薬などが処方される対症療法が中心となります。