熱中症にかかり、適切な治療や水分・塩分補給を行った後、体調が回復に向かう過程で、一時的にトイレの回数が増えたり、尿の量が多くなったりすることがあります。これは、病状が悪化しているのではなく、むしろ体が正常な状態に戻ろうとしている「良い兆候」であることがほとんどです。この現象を理解するためには、熱中症で脱水状態に陥った時の体の中で何が起こっているかを知る必要があります。脱水状態になると、体は生命を維持するために、できるだけ水分を体内に保持しようとします。腎臓は尿の量を減らし、血液中の水分を確保しようと働きます。また、体内の循環が悪くなり、細胞の間に余分な水分(浮腫)が溜まったり、老廃物がうまく排出されずに体内に蓄積したりすることもあります。ここで、点滴を受けたり、経口補水液を飲んだりして、適切な水分と電解質が体内に補給されると、状況は一変します。まず、血液の量が正常に戻り、全身の血流が改善します。すると、これまで機能が低下していた腎臓も再び活発に働き始めます。腎臓は、血流が回復したことを受けて、体内に溜まっていた不要な老廃物や、治療によって補給された水分の中で余分となったものを、尿として一気に排出しようとします。これが、回復期に尿量が増える主なメカニズムです。細胞の間に溜まっていた水分も血管内に戻り、尿として排出されるため、一時的にむくみが取れると共に尿量が増えることもあります。したがって、熱中症の治療後に尿がしっかりと出て、その回数や量が増えてきたら、それは体内の水分バランスが正常化し、腎臓をはじめとする臓器が本来の機能を取り戻しつつある証拠と捉えることができます。もちろん、回復期に再び体調が悪化するような場合は注意が必要ですが、多くの場合、この「頻尿」は快方に向かうための自然なプロセスの一部なのです。