急な胸の痛みに襲われた時、手軽に手に入る市販の鎮痛薬でひとまず痛みを抑えようと考える人は少なくないでしょう。確かに、原因がはっきりしている軽度の肋間神経痛であれば、市販薬も一時的な症状緩和に役立つことがあります。しかし、自己判断で安易に市販薬を使い続けることには、いくつかの大きなリスクが潜んでいます。最大のリスクは、その痛みの背後に隠れているかもしれない、重篤な病気の発見を遅らせてしまうことです。前述の通り、胸の痛みの原因は肋間神経痛だけではありません。心筋梗塞や気胸、帯状疱疹など、一刻も早い治療が必要な病気の初期症状である可能性も否定できないのです。もし、これらの病気が原因であった場合、市販薬で痛みを一時的にごまかしている間に病状は進行し、取り返しのつかない事態を招きかねません。痛みが和らいだことで「治った」と錯覚し、医療機関への受診が遅れることが最も危険なのです。また、市販の鎮痛薬、特に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、胃腸障害の副作用を起こしやすいことでも知られています。原因がはっきりしないまま漫然と服用を続けると、胃痛や胃もたれ、ひどい場合には胃潰瘍を引き起こす可能性もあります。さらに、そもそも痛みの原因によっては、市販の鎮痛薬がほとんど効果を示さないこともあります。例えば、帯状疱疹による神経の痛みなどには、特殊な神経系の薬が必要となり、一般的な鎮痛薬では太刀打ちできません。効果がないのに薬を飲み続けることは、副作用のリスクを高めるだけであり、全く意味がありません。痛みの原因を正確に突き止め、その原因に合った適切な治療を受けること。これが、安全かつ効果的に症状を改善させるための唯一の道です。胸の痛みを感じたら、まずは市販薬に頼るのではなく、専門家である医師の診断を仰ぐことを優先してください。