手足口病は、その名の通り、手のひら、足の裏、そして口の中に特徴的な水ぶくれ(水疱)や発疹が現れる、夏場を中心に子どもたちの間で流行する感染症です。この病気は、主にエンテロウイルス属のウイルス(コクサッキーウイルスやエンテロウイルス71など)によって引き起こされます。感染力が非常に強く、保育園や幼稚園、小学校などで集団発生することも少なくありません。では、手足口病はどのようにして「うつる」のでしょうか。その感染経路は、主に3つあると理解することが、感染対策の第一歩となります。第一の経路は「飛沫感染」です。感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散るしぶき(飛沫)に含まれるウイルスを、周りの人が鼻や口から吸い込むことで感染します。病気の初期段階、特に発熱や喉の痛みがある時期に注意が必要です。第二の経路は「接触感染」です。感染者が触れたドアノブやおもちゃ、タオルなどにウイルスが付着し、それを別の人が手で触れ、その手で自分の目や鼻、口を触ることによって、ウイルスが体内へ侵入します。また、手足口病の特徴である水疱が破れた際、その内容液にもウイルスが含まれているため、直接触れることでも感染します。そして、第三の、そして最も厄介な経路が「糞口感染(ふんこうかんせん)」です。感染者の便(うんち)の中には、大量のウイルスが排出されます。おむつ交換の際に、処理をする人の手にウイルスが付着したり、トイレの後に十分に手が洗えていなかったりすると、その手を介してウイルスが口に入り、感染が成立します。この糞口感染が手足口病の感染対策を難しくしている最大の理由です。なぜなら、症状がすっかり治った後でも、ウイルスは便の中から数週間にわたって排出され続けるからです。このように、手足口病は複数の経路で感染が広がるため、一つの対策だけでは不十分です。手洗いや咳エチケット、そして排泄物の適切な処理といった、複合的な感染対策を徹底することが、感染拡大を防ぐために何よりも重要となります。