夏の健康管理において、水分補給は最も重要なテーマの一つですが、その方法を間違えると、かえって熱中症のリスクを高めてしまうことがあります。「トイレの回数」は、その水分補給が正しく行われているかを知るための重要なバロメーターとなります。熱中症の典型的な症状は、大量の発汗による脱水で尿が濃くなり、回数が減ることです。これは体内の水分が危険なレベルまで減少しているサインであり、直ちに水分と塩分の補給が必要です。一方で、注意しなければならないのが、水分を摂っているにもかかわらず「トイレの回数が増え、尿の色が非常に薄い」という状態です。これは、体が必要な水分をうまく吸収・保持できていないサインかもしれません。特に、水やお茶といった塩分を含まない液体だけを大量に摂取している場合にこの現象は起こりやすくなります。汗からは水分だけでなく、ナトリウムなどの電解質(塩分)も失われます。その失われた塩分を補給せずに水だけを飲むと、体液の塩分濃度が薄まってしまいます。体はこれを正常な状態に戻そうとして、水分を尿として排出し、結果的に頻尿となるのです。これでは、いくら飲んでもザルで水をすくうようなもので、体は潤わず、脱水状態は改善されません。正しい水分補給の鍵は、「水分」と「塩分」をセットで摂ることにあります。最も効率的なのは、水分と電解質がバランス良く配合された経口補水液やスポーツドリンクを利用することです。また、日常生活の中では、麦茶を飲む際に塩昆布や梅干しを一緒に食べたり、食事で味噌汁やスープといった塩分を含む汁物を積極的に取り入れたりすることも有効です。トイレの回数が極端に少ないのはもちろん危険ですが、多すぎる場合もまた、水分補給の方法を見直すべきサインであると認識することが大切です。自分の体の変化に注意を払い、適切な水分と塩分の補給を心がけることが、厳しい夏を乗り切るための賢い選択と言えるでしょう。