子どものりんご病の代名詞とも言える、鮮やかな「りんごほっぺ」。しかし、大人がりんご病に感染した場合、この頬の赤い発疹は、必ずしも主役ではありません。むしろ、多くの大人を苦しめるのが、発疹と共に出現する、あるいは、発疹よりも強く現れる、耐え難い「関節痛」や「関節炎」です。この関節症状は、大人のりんご病の、最も大きな特徴であり、診断の手がかりともなります。関節症状は、特に女性に多く見られ、発症した大人の約60~80%に認められるとされています。痛みや腫れが現れやすいのは、手首、手指の第二関節(PIP関節)や付け根の関節(MP関節)、膝、足首といった、末梢の小さな関節です。朝、起きた時に、手がこわばって、グーが握れない、あるいは、関節が腫れて、指輪が入らなくなるといった、「朝のこわばり」を伴うのが、非常に特徴的です。この症状は、自己免疫疾患である「関節リウマチ」の初期症状と、非常によく似ています。そのため、突然の関節痛でリウマチを心配して、リウマチ科を受診したところ、詳しく調べてみたら、原因はりんご病(ヒトパルボウイルスB19感染症)だった、というケースも少なくありません。痛みは、数週間から、長い場合は数ヶ月続くこともあり、日常生活や仕事に、大きな影響を与えます。ペンが持てない、キーボードが打てない、あるいは、膝や足首の痛みで、歩くのが困難になることもあります。りんご病による関節炎は、通常、関節リウマチのように、関節の破壊や変形を引き起こすことはなく、後遺症を残さずに治癒するのが、大きな違いです。しかし、その間の症状は、非常につらいものです。関節痛が主な症状で、りんご病が疑われる場合、受診すべき診療科は、関節炎の専門家である「リウマチ・膠原病内科」や、骨・関節を扱う「整形外科」、あるいは、まずは全身を診てくれる「一般内科」が適切です。血液検査で、ヒトパルボウイルスB19に対する抗体を調べることで、診断を確定させることができます。
大人のりんご病、頬の赤みよりつらい関節痛