耳鼻咽喉科や脳神経内科、内科などで、一通りの検査をしても、「特に異常はありません」と言われる。しかし、実際には、ふわふわとした、あるいはグラグラとした、不快なめまいの感覚が、ずっと続いている。このような、明らかな身体的な原因が見つからないにもかかわらず、めまいの症状に悩まされる場合、その背景には「心理的ストレス」が大きく関与している可能性があります。このような状態は「心因性めまい」とも呼ばれ、この場合に相談先として考えられるのが「心療内科」や「精神科」です。強い不安や、抑うつ気分、あるいは過去のトラウマ体験などが、脳の平衡感覚を処理するシステムに、誤作動を引き起こし、身体的な異常がないにもかかわらず、めまいとして感じさせてしまうのです。心因性めまいは、しばしば「パニック障害」や「不安障害」、「うつ病」といった、他の精神疾患の一症状として現れます。例えば、パニック障害では、突然、理由もなく、激しい動悸や息切れ、そして「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖感と共に、強烈なめまいに襲われることがあります。また、広場や乗り物の中など、特定の状況下で、不安と共に、ふわふわとしためまいを感じることもあります。心療内科では、まず、患者さんの話をじっくりと聞くカウンセリングを通じて、めまいの症状と、その背景にあるストレス要因や、心理的な葛藤との関連性を探っていきます。そして、治療としては、まず患者さん自身が、自分の症状と、心の状態との繋がりを理解し、受け入れることが第一歩となります。その上で、物事の捉え方を変えていく認知行動療法や、心身の緊張を解きほぐすリラクゼーション法といった、心理的なアプローチが行われます。薬物療法としては、不安感を和らげる「抗不安薬」や、脳内の神経伝達物質のバランスを整える「抗うつ薬(SSRIなど)」が、めまいの改善に、非常に効果的な場合があります。原因不明のつらいめまいが続く場合は、体の側面だけでなく、「心」の側面からアプローチしてくれる心療内科への相談も、解決への重要な選択肢の一つです。