夏本番、青空の下で楽しむバーベキューは格別の美味しさですが、楽しい思い出が一転、食中毒の悪夢とならないよう、細心の注意が必要です。特に夏場に警戒すべき食中毒菌の一つが、「腸管出血性大腸菌」、中でも代表的な「O157」です。この菌は、牛などの家畜の腸内に存在することがあり、食肉の加工過程や調理中に付着することがあります。O157の恐ろしい点は、ごく少量の菌が体内に入るだけで発症すること、そして強力な毒素(ベロ毒素)を産生し、激しい症状を引き起こすことです。潜伏期間は3日から5日と比較的長く、主な症状は激しい腹痛、水様性の下痢から始まり、やがて血便へと移行します。発熱を伴うこともありますが、高熱にならないケースも多いのが特徴です。特に、抵抗力の弱い子供や高齢者は重症化しやすく、溶血性尿毒症症候群(HUS)という命に関わる合併症を引き起こすことがあります。HUSを発症すると、腎機能障害や意識障害などをきたし、後遺症が残る場合や、最悪の場合は死に至ることもあります。バーベキューの場面では、いくつかの危険なポイントが潜んでいます。まず、肉の加熱不足です。肉の塊は表面が焼けていても、中心部まで十分に火が通っていないことがあります。O157は熱に弱く、中心部を75度で1分間以上加熱すれば死滅します。肉は見た目だけでなく、中心部までしっかり加熱されたことを確認してから食べましょう。次に危険なのが、調理器具の使い分けです。生肉を扱ったトングや箸で、焼き上がった肉や野菜を取り分けたり、サラダを混ぜたりするのは絶対にやめてください。トングや箸を介して菌が他の食材に付着し、クロスコンタミネーション(交差汚染)を引き起こします。生肉用と取り分け用で、調理器具は必ず使い分ける習慣をつけましょう。また、生肉を触った手で、他の食材や食器に触れるのも危険です。こまめな手洗いを徹底することが重要です。楽しいバーベキューを安全に楽しむためには、食材の十分な加熱、調理器具の使い分け、そして手洗いという基本を全員が徹底することが不可欠です。少しの注意が、あなたと大切な仲間を深刻な食中毒から守ります。