足の血管が浮き出てきても、「痛みもないし、見た目が気になるだけだから」と、つい放置してしまっている方はいませんか。しかし、下肢静脈瘤はゆっくりと進行していく病気であり、軽く考えて放置すると、将来的につらい症状や合併症を引き起こす可能性があります。初期の段階では、足のだるさやむくみ、こむら返りといった症状が主ですが、進行するにつれてこれらの症状は慢性化し、日常生活の質を大きく低下させることになります。常に足が重く、少し歩いただけでも疲れてしまう、夜中に何度も足がつって目が覚めてしまうなど、快適な生活が脅かされるのです。さらに病気が進行すると、血液のうっ滞(よどみ)がひどくなり、皮膚にも影響が現れ始めます。足首のあたりを中心に皮膚が硬くなったり、茶色っぽく色素沈着を起こしたりします。かゆみを伴う湿疹(うっ滞性皮膚炎)ができることもあり、一度発症すると治りにくいのが特徴です。そして、最も重篤な状態が「皮膚潰瘍」です。これは、皮膚の血行が極端に悪くなることで皮膚の組織が壊死し、傷ができてえぐれてしまう状態です。強い痛みを伴い、細菌感染のリスクも高まります。ここまで進行すると治療も困難になり、完治までに長い時間を要することになります。また、非常に稀ではありますが、静脈瘤の中にできた血の塊(血栓)が炎症を起こす「血栓性静脈炎」を発症することもあります。下肢静脈瘤は、命に直接関わるような緊急性の高い病気ではありません。しかし、だからこそ自己判断で放置されがちです。将来の深刻なトラブルを避けるためにも、症状が軽いうちに一度、血管外科などの専門医を受診し、適切な診断とアドバイスを受けることが非常に重要です。