疲れやすい、むくみが取れない、なぜかイライラする。こうした日常的な不調を感じたとき、「いつものことだから」「忙しいから仕方ない」と自分に言い聞かせて、つい我慢してしまう女性は多いのではないでしょうか。しかし、もしその原因が甲状腺の機能異常にあるとしたら、放置することは将来の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。例えば、甲状腺ホルモンが過剰になるバセドウ病などを治療せずにいると、心臓に常に大きな負担がかかり続けることになります。その結果、不整脈や心不全といった深刻な心臓病を引き起こすリスクが高まります。また、骨の代謝が過剰に促進されるため、骨がもろくなる骨粗しょう症を若いうちから発症することもあります。逆に、甲状腺ホルモンが不足する橋本病などを放置した場合も、さまざまな問題が生じます。体全体の代謝が低下するため、血液中のコレステロール値が上昇し、動脈硬化が進行しやすくなります。これは、将来的に心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める要因となります。また、妊娠を希望する女性にとっては、甲状腺機能の低下が不妊や流産の原因になることも知られており、見過ごすことはできません。さらに、甲状腺ホルモンは精神状態にも深く関わっています。機能低下症による無気力や抑うつ症状は、うつ病と誤解され、適切な治療を受けられないまま長く苦しむことにもなりかねません。甲状腺の病気は、適切な治療を受ければ、ホルモンバランスをコントロールし、健常な人と変わらない生活を送ることが十分に可能です。大切なのは、自分の体の小さなサインに耳を傾け、早期に医療機関を受診することです。あなたのその不調は、決して気のせいではありません。将来の自分のために、そして大切な家族のために、勇気を出して一歩を踏み出すことが何よりも重要なのです。