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子どもの咳、まず頼るべきは「小児科」
子どもが、コンコン、ゴホゴホと咳をし始めると、親としては、非常に心配になるものです。特に、小さな子どもは、自分の症状をうまく言葉で表現できないため、その咳が、ただの風邪なのか、あるいは、もっと注意が必要な病気のサインなのか、判断に迷うことも多いでしょう。子どもの咳で、まず最初に、そして総合的に頼るべき診療科は、かかりつけの「小児科」です。小児科医は、単に小さな大人として子どもを診るのではなく、成長・発達の過程にある、子どもの体の特性を、深く理解しています。そして、子どもの咳の原因となる、多種多様な病気(RSウイルス感染症、クループ症候群、百日咳、気管支喘息など)の診断と治療に、最も精通している専門家です。子どもの気道は、大人に比べて、細く、粘膜もデリケートなため、わずかな炎症でも、症状が強く出やすいという特徴があります。例えば、「クループ症候群」は、ウイルス感染によって、声帯のあたりが急激に腫れる病気で、「犬が吠えるような」「オットセイの鳴き声のような」と表現される、特徴的な咳と、息を吸う時に、ヒューヒューという音(吸気性喘鳴)がするのが特徴です。夜間に悪化しやすく、窒息の危険もあるため、緊急の対応が必要です。また、乳幼児期に、ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴と、湿った咳を繰り返す場合は、「RSウイルス感染症」による細気管支炎や、「乳児喘息」の可能性があります。小児科では、まず、聴診器で、胸の音を注意深く聞き、呼吸の状態(呼吸回数や、陥没呼吸の有無など)を、慎重に観察します。そして、子どもの年齢や、季節、周囲の流行状況などを考慮しながら、最も可能性の高い原因を推測します。治療も、子どもの年齢や体重に合わせて、薬の種類や量を、きめ細かく調整してくれます。また、気管支喘息が疑われる場合には、吸入薬の正しい使い方を、親子に丁寧に指導したり、アレルギーの原因を調べるための検査を行ったりもします。そして、何よりも、小児科医は、病気の子どもだけでなく、不安でいっぱいの保護者の心にも、寄り添ってくれます。子どもの咳で迷ったら、まずは、最も信頼できるパートナーである、かかりつけの小児科医に相談することから始めましょう。
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長引く咳や喘息の専門家「呼吸器内科」
「風邪は治ったはずなのに、咳だけが、もう3週間以上も続いている」「季節の変わり目になると、決まって咳がひどくなる」「夜中や明け方に、咳き込んで目が覚める」。このような、長引く、あるいは特定のパターンを持つ咳に悩まされている場合、より専門的な診断と治療のために、受診を強くお勧めするのが「呼吸器内科」です。呼吸器内科は、その名の通り、呼吸に関わる臓器、すなわち、気管、気管支、肺、そして胸膜などの病気を専門的に扱う、内科の一分野です。長引く咳(遷延性・慢性咳嗽)の原因は、多岐にわたりますが、呼吸器内科では、専門的な検査を駆使して、その原因を正確に突き止めていきます。代表的な検査には、「胸部X線(レントゲン)撮影」や、より詳細に肺を観察できる「胸部CT検査」といった画像検査があります。これらは、肺炎や肺結核、肺がんといった、重大な病気が隠れていないかを調べる上で、不可欠です。また、息を吸ったり吐いたりする能力を測定する「呼吸機能検査(スパイロメトリー)」は、「気管支喘息」や「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」の診断に、非常に重要な検査です。気管支喘息は、気道に慢性的なアレルギー性の炎症が起こり、様々な刺激に対して気道が過敏になる病気で、咳だけが唯一の症状である「咳喘息」というタイプもあります。呼吸器内科では、これらの検査結果と、詳細な問診(アレルギー歴や喫煙歴など)を組み合わせ、咳の原因を診断します。治療も、専門性が高くなります。例えば、気管支喘息や咳喘息に対しては、気道の炎症を抑える「吸入ステロイド薬」が、治療の基本となります。この吸入薬を、正しく、そして継続的に使用することが、発作を予防し、症状をコントロールする鍵となります。呼吸器内科医や、専門の看護師は、患者さん一人ひとりに、吸入器の正しい使い方を、丁寧に指導してくれます。その他、マイコプラズマ肺炎や百日咳といった、特殊な感染症の診断と治療も、呼吸器内科の得意とするところです。しつこい咳に悩んでいるなら、呼吸器の専門家である、呼吸器内科医の力を借りるのが、解決への一番の近道です。
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大人がうつると重症化しやすい?手足口病の症状と注意点
手足口病は「子どもの夏風邪」というイメージが強く、実際に患者のほとんどは乳幼児です。しかし、大人も決して無関係ではありません。子どもから家庭内感染するケースは多く、大人が手足口病にうつると、子どもよりも症状が重く、つらい経過をたどることが少なくないのです。多くの場合、大人は過去に同じタイプのウイルスに感染した経験があり、免疫を持っているため、感染しても発症しないか、ごく軽い症状で済むことがほとんどです。しかし、感染したウイルスの型が、これまで一度もかかったことのない型であったり、あるいは疲労やストレスで免疫力が低下していたりすると、大人でも発症してしまいます。大人が手足口病に感染した場合の症状は、子どもと同様に、発熱と、手・足・口の発疹が三主徴となりますが、その程度がより強く出やすい傾向があります。まず、発熱は38~39度の高熱が出ることが多く、強い悪寒や頭痛、全身の筋肉痛、関節痛といった、インフルエンザのような激しい全身症状を伴うことがあります。喉の痛みも非常に強く、口の中にできた口内炎(水疱が破れた後の潰瘍)の痛みが激しいため、食事や水分を摂ることも困難になるケースが見られます。そして、大人の手足口病で特に辛いのが、手足の発疹に伴う「痛み」です。子どもの場合は、発疹にかゆみを伴うことはあっても、強い痛みを訴えることは稀ですが、大人の場合は、水疱がピリピリ、ズキズキと痛み、特に足の裏にできると、体重をかけるだけで激痛が走り、歩行が困難になることもあります。手のひらの発疹の痛みで、仕事や家事など、手を使う作業が全くできなくなる人もいます。また、症状が治まった後、数週間から数ヶ月経ってから、手足の爪が根本から剥がれてくる「爪甲脱落症」という後遺症が見られることもあります。これも大人に比較的多く見られる症状です。このように、大人が手足口病にうつると、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。子どもが感染した際は、「自分は大丈夫」と油断せず、徹底した感染対策で自身の感染を防ぐことが何よりも大切です。
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女性特有の悩み、婦人科を受診すべき症状
女性の体は、思春期、性成熟期、更年期、老年期という、ライフステージの変化に伴い、女性ホルモンの分泌が、ダイナミックに変動します。このホルモンバランスの変化が、心身に様々な影響を及ぼし、女性特有の病気や不調を引き起こします。これらの、女性の体に特化した悩みを、専門的に診断・治療するのが「婦人科」です。(妊娠・出産を主に扱うのは「産科」であり、両方を合わせて「産婦人科」と呼びます。)婦人科を受診すべき症状は、多岐にわたりますが、まず、最も分かりやすいのが「月経(生理)」に関するトラブルです。「生理痛がひどくて、毎回寝込んでしまう(月経困難症)」「経血の量が異常に多い(過多月経)」「生理の周期がバラバラ(月経不順)」「生理ではない時に、出血がある(不正出血)」。これらの症状の背後には、「子宮筋腫」や「子宮内膜症」、「子宮腺筋症」といった、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。放置すると、不妊の原因になったり、貧血が進行したりすることもあるため、我慢せずに相談することが大切です。次に、「おりもの」の異常です。「量が異常に多い」「色が黄色や緑色っぽい」「悪臭がする」「カッテージチーズのようにポロポロしている」。これらは、細菌性腟症や、カンジダ腟炎、あるいは、クラミジアや淋菌といった「性感染症(STD)」のサインかもしれません。外陰部のかゆみや、痛みを伴うこともあります。パートナーと共に治療が必要な場合もあるため、早期の診断が重要です。また、「下腹部痛」も、婦人科疾患の重要な症状です。特に、突然の激しい下腹部痛は、卵巣嚢腫の茎捻転や、子宮外妊娠の破裂といった、緊急手術が必要な病気の可能性があり、一刻を争います。そして、40代後半以降の女性に現れる、「のぼせ、ほてり(ホットフラッシュ)、異常な発汗、動悸、めまい、イライラ、気分の落ち込み」といった、多彩な心身の不調は、「更年期障害」の可能性があります。ホルモン補充療法や漢方薬などで、つらい症状を和らげることができます。これらの症状は、デリケートな問題であるため、一人で抱え込みがちですが、婦人科医は、女性の生涯にわたる健康をサポートする、最も頼れるパートナーです。
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ストレスが原因?心因性めまいと心療内科
耳鼻咽喉科や脳神経内科、内科などで、一通りの検査をしても、「特に異常はありません」と言われる。しかし、実際には、ふわふわとした、あるいはグラグラとした、不快なめまいの感覚が、ずっと続いている。このような、明らかな身体的な原因が見つからないにもかかわらず、めまいの症状に悩まされる場合、その背景には「心理的ストレス」が大きく関与している可能性があります。このような状態は「心因性めまい」とも呼ばれ、この場合に相談先として考えられるのが「心療内科」や「精神科」です。強い不安や、抑うつ気分、あるいは過去のトラウマ体験などが、脳の平衡感覚を処理するシステムに、誤作動を引き起こし、身体的な異常がないにもかかわらず、めまいとして感じさせてしまうのです。心因性めまいは、しばしば「パニック障害」や「不安障害」、「うつ病」といった、他の精神疾患の一症状として現れます。例えば、パニック障害では、突然、理由もなく、激しい動悸や息切れ、そして「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖感と共に、強烈なめまいに襲われることがあります。また、広場や乗り物の中など、特定の状況下で、不安と共に、ふわふわとしためまいを感じることもあります。心療内科では、まず、患者さんの話をじっくりと聞くカウンセリングを通じて、めまいの症状と、その背景にあるストレス要因や、心理的な葛藤との関連性を探っていきます。そして、治療としては、まず患者さん自身が、自分の症状と、心の状態との繋がりを理解し、受け入れることが第一歩となります。その上で、物事の捉え方を変えていく認知行動療法や、心身の緊張を解きほぐすリラクゼーション法といった、心理的なアプローチが行われます。薬物療法としては、不安感を和らげる「抗不安薬」や、脳内の神経伝達物質のバランスを整える「抗うつ薬(SSRIなど)」が、めまいの改善に、非常に効果的な場合があります。原因不明のつらいめまいが続く場合は、体の側面だけでなく、「心」の側面からアプローチしてくれる心療内科への相談も、解決への重要な選択肢の一つです。
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鼻水や喉の痛みを伴う咳は「耳鼻咽喉科」へ
咳という症状は、肺や気管支といった「下気道」の問題だけでなく、その手前にある、鼻や喉といった「上気道」のトラブルが、原因となっていることも少なくありません。特に、咳と共に、「しつこい鼻水や鼻づまり」「喉の痛みやイガイガ感」「痰が喉にへばりつく感じ」といった、鼻や喉の症状が、主体である場合は、「耳鼻咽喉科」の受診が、非常に有効な選択肢となります。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳・鼻・喉(咽頭・喉頭)の病気を専門とするエキスパートです。咳の原因となる、代表的な耳鼻科領域の疾患には、いくつかあります。まず、「副鼻腔炎(蓄膿症)」です。これは、鼻の奥にある、副鼻腔という空洞に、ウイルスや細菌の感染によって、膿がたまってしまう病気です。この、粘り気のある、色のついた鼻水が、喉の方へ流れ落ちる「後鼻漏(こうびろう)」が、喉を刺激し、日中も、そして特に、横になった夜間に、湿った咳を引き起こす、大きな原因となります。次に、「アレルギー性鼻炎」です。スギ花粉やハウスダストなどが原因で、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状が起こりますが、これも後鼻漏を介して、咳を誘発します。また、喉そのものの炎症、例えば「咽頭炎・喉頭炎」も、咳の原因となります。喉の粘膜が炎症を起こし、過敏になることで、咳反射が起こりやすくなるのです。耳鼻咽喉科では、専門的な器具を用いて、鼻の中や、喉の奥の状態を、直接、詳細に観察することができます。内視鏡(ファイバースコープ)を使えば、副鼻腔の入り口の状態や、声帯の炎症の有無まで、はっきりと確認することが可能です。そして、原因に応じた、専門的な治療を行います。副鼻腔炎であれば、鼻の中の膿を吸引する処置や、抗生物質の入った霧を吸入する「ネブライザー治療」が、症状の改善に非常に効果的です。アレルギー性鼻炎に対しては、抗アレルギー薬の内服に加えて、鼻に直接噴霧する、ステロイド点鼻薬が、咳の原因となる後鼻漏を抑えるのに役立ちます。咳が長引く時、その原因は、意外と「鼻」や「喉」に隠れているかもしれません。
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喉の激痛と高熱、溶連菌感染症の可能性
「つばを飲み込むのも激痛」「カミソリの刃を飲み込むようだ」と表現されるほどの、強烈な喉の痛みと、38.5度を超えるような高熱が、突然現れた場合。それは、単なる風邪ではなく、「A群β溶血性連鎖球菌」という細菌による、「溶連菌感染症」の可能性があります。この病気は、特に子どもの間で流行しますが、もちろん、大人も感染し、しばしば重い症状に苦しめられます。溶連菌感染症が疑われる場合、受診すべき診療科は、大人は「内科」または「耳鼻咽喉科」、子どもは「小児科」です。溶連菌感染症の喉の所見は、非常に特徴的です。喉の奥、特に口蓋垂(のどちんこ)の両脇にある扁桃腺が、真っ赤に、そして大きく腫れあがり、その表面に、白い点々とした膿(白苔)が付着していることが多くあります。また、舌の表面が、赤くブツブツになり、見た目がイチゴのように見える「いちご舌」や、喉の奥の天井部分(軟口蓋)に、赤い点状の内出血が見られることも、診断の重要な手がかりとなります。喉の症状と前後して、体にも、紙やすりのようにザラザラとした、細かい赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」という状態になることもあります。この病気で、最も重要なのは、原因が「細菌」であるため、治療には「抗生物質」が、絶対的に必要であるという点です。医療機関では、喉の粘液を綿棒で採取する、迅速診断キットを用いて、その場で診断を確定させ、直ちに抗生物質の処方を行います。ペニシリン系の抗生物質を、通常10日間、服用します。抗生物質を飲み始めると、熱や喉の痛みといった、つらい症状は、2~3日で劇的に改善しますが、ここで自己判断で薬をやめてしまうのは、絶対に禁物です。症状が治まっても、喉の奥に生き残った少数の菌が、数週間後に、心臓に障害をきたす「リウマチ熱」や、腎臓に炎症が起こる「急性糸球体腎炎」といった、重篤な合併症を引き起こす可能性があるからです。処方された抗生物質を、指示された期間、最後まで、確実に飲み切ること。これが、溶連菌感染症の治療において、何よりも重要な約束事です。
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グルグル回るめまいは耳鼻咽喉科が専門
めまいの症状の中でも、特に「自分自身や、周りの景色がグルグルと回転するような感覚」を伴う場合は、「回転性めまい」と呼ばれ、その原因のほとんどは、耳の奥にある平衡感覚を司る器官、すなわち「内耳」のトラブルにあります。したがって、このような回転性のめまいを感じた場合に、まず受診すべき診療科は「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科で扱う代表的なめまいの病気には、いくつかの種類があります。最も頻度が高いのが「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」です。これは、内耳にある耳石という炭酸カルシウムの粒が剥がれ、三半規管の中に入り込んでしまうことで起こります。頭を特定の方向に動かした時(寝返りをうつ、起き上がるなど)に、数十秒程度の短い、激しい回転性めまいが生じるのが特徴です。吐き気を伴いますが、難聴や耳鳴りは伴いません。次に、激しい回転性めまいに加えて、片側の耳鳴りや難聴、耳の閉塞感を伴う場合は、「メニエール病」の可能性があります。めまいの発作を数時間単位で繰り返し、進行すると聴力が低下していくのが特徴です。また、風邪などをひいた後に、突然、数日間続く非常に強い回転性めまいと吐き気に襲われ、聴覚症状は伴わない場合は、「前庭神経炎」が疑われます。耳鼻咽喉科では、まず詳しい問診でめまいの性質やきっかけなどを確認します。そして、眼の異常な動きを観察する「眼振検査」や、体のバランスを調べる「重心動揺検査」、聴力を調べる「聴力検査」など、専門的な検査を組み合わせて診断を下します。治療は、めまいを抑える薬や吐き気止めに加え、BPPVに対しては、三半規管に入った耳石を元の位置に戻すための「理学療法(頭位治療)」が非常に有効です。
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まとめ。大人のりんご病、正しい知識で冷静な対応を
りんご病は、その可愛らしい名前とは裏腹に、大人がかかると、しばしば、つらく、そして長引く症状に悩まされる、厄介な感染症です。特に、関節リウマチと見紛うほどの激しい関節痛は、日常生活に大きな影響を与え、患者さんを、大きな不安に陥れます。ここで、大人がりんご病を疑った時の、行動指針を、改めて整理してみましょう。Step 1:症状を客観的に観察する。まず、自分の症状を、冷静にチェックします。「頬や、手足に、赤い発疹があるか?」「発疹は、レース状に見えるか?」「どの関節が、どのように痛むか?」「朝、こわばる感じはあるか?」「発熱や、倦怠感はあるか?」これらの情報が、後の診察で、非常に役立ちます。Step 2:症状に応じて、適切な診療科を選ぶ。①関節の痛みや腫れが、主な症状の場合 → 関節炎の専門家であり、関節リウマチとの鑑別が不可欠なため、「リウマチ・膠原病内科」が、最も適しています。②頬の赤みや、皮膚の発疹が、気になる場合 → 皮膚症状の専門家である「皮膚科」を受診すれば、正確な診断が期待できます。③どの科に行けばよいか、迷う場合 → 発熱や倦怠感といった、全身症状もあるため、まずは、かかりつけの「一般内科」に相談し、総合的な視点から診察してもらうのが、最も安心で、スムーズです。**Step 3:妊娠中の女性は、特に注意する。**妊娠中に、りんご病に感染した可能性がある場合(家族の感染など)は、症状の有無にかかわらず、必ず、かかりつけの「産婦人科」の主治医に、その旨を報告し、相談してください。血液検査で、感染の有無を確認し、必要な場合は、胎児の経過観察が行われます。大人のりんご病は、その特徴的な症状、特に関節炎について、まだ一般的に、十分に知られていないため、診断が遅れたり、不要な心配を抱えたりすることが少なくありません。正しい知識を持つことが、冷静な対応と、適切な医療へのアクセスに繋がります。つらい症状に悩んだら、一人で抱え込まず、専門医の助けを借りるようにしてください。
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喉の激痛の正体、なぜ大人は重症化するのか
大人のヘルパンギーナを、これほどまでに苦しめる、喉の激痛。その正体は、喉の奥の粘膜、専門的には軟口蓋や口蓋弓と呼ばれる、のどちんこの周辺に、多発する「小水疱」と、それが破れた後にできる「アフタ性潰瘍」にあります。ヘルパンギーナウイルスに感染すると、まず、喉の奥の粘膜に、充血した赤い小さな斑点が多数出現します。そして、その中心部が、ぷくっと盛り上がり、白っぽい水ぶくれとなります。この水疱の壁は、非常に薄くてもろいため、食事や飲み物、あるいは唾液が触れる、ごくわずかな刺激で、すぐに破れてしまいます。水疱が破れた後の粘膜は、表面の上皮が剥がれ落ち、下の組織がむき出しになった、いわゆる「びらん」や「潰瘍」の状態になります。これが、白く見える、浅い口内炎の正体です。この痛々しい潰瘍が、喉の奥の狭い範囲に、多い時には十数個も同時に、密集してできるため、何もしなくてもジンジンと痛む「自発痛」と、何かを飲み込もうとした時に、粘膜がこすれて生じる、鋭く突き刺すような「嚥下痛」が、常に患者を苦しめることになるのです。では、なぜ、大人が感染すると、子どもよりも症状が重く、痛みが強くなるのでしょうか。その明確な理由は、完全には解明されていませんが、いくつかの説が考えられています。最も有力なのが、「免疫反応の強さの違い」です。子どもは、免疫システムがまだ発達途上であるため、ウイルスに対して、比較的穏やかに反応します。しかし、免疫システムが完成している大人は、初めて遭遇するウイルスに対して、サイトカインなどを過剰に放出する、より強力で、激しい免疫反応を起こすことがあります。この、強すぎる免疫反応が、結果的に、より強い炎症と、激しい痛み、そして高熱といった、重い全身症状を引き起こすのではないか、と考えられているのです。つまり、ウイルスを排除しようとする、体の正当な防御反応が、皮肉にも、自分自身を、より深く苦しめる結果に繋がっている、と言えるのかもしれません。