女性の体は、思春期、性成熟期、更年期、老年期という、ライフステージの変化に伴い、女性ホルモンの分泌が、ダイナミックに変動します。このホルモンバランスの変化が、心身に様々な影響を及ぼし、女性特有の病気や不調を引き起こします。これらの、女性の体に特化した悩みを、専門的に診断・治療するのが「婦人科」です。(妊娠・出産を主に扱うのは「産科」であり、両方を合わせて「産婦人科」と呼びます。)婦人科を受診すべき症状は、多岐にわたりますが、まず、最も分かりやすいのが「月経(生理)」に関するトラブルです。「生理痛がひどくて、毎回寝込んでしまう(月経困難症)」「経血の量が異常に多い(過多月経)」「生理の周期がバラバラ(月経不順)」「生理ではない時に、出血がある(不正出血)」。これらの症状の背後には、「子宮筋腫」や「子宮内膜症」、「子宮腺筋症」といった、治療が必要な病気が隠れている可能性があります。放置すると、不妊の原因になったり、貧血が進行したりすることもあるため、我慢せずに相談することが大切です。次に、「おりもの」の異常です。「量が異常に多い」「色が黄色や緑色っぽい」「悪臭がする」「カッテージチーズのようにポロポロしている」。これらは、細菌性腟症や、カンジダ腟炎、あるいは、クラミジアや淋菌といった「性感染症(STD)」のサインかもしれません。外陰部のかゆみや、痛みを伴うこともあります。パートナーと共に治療が必要な場合もあるため、早期の診断が重要です。また、「下腹部痛」も、婦人科疾患の重要な症状です。特に、突然の激しい下腹部痛は、卵巣嚢腫の茎捻転や、子宮外妊娠の破裂といった、緊急手術が必要な病気の可能性があり、一刻を争います。そして、40代後半以降の女性に現れる、「のぼせ、ほてり(ホットフラッシュ)、異常な発汗、動悸、めまい、イライラ、気分の落ち込み」といった、多彩な心身の不調は、「更年期障害」の可能性があります。ホルモン補充療法や漢方薬などで、つらい症状を和らげることができます。これらの症状は、デリケートな問題であるため、一人で抱え込みがちですが、婦人科医は、女性の生涯にわたる健康をサポートする、最も頼れるパートナーです。
女性特有の悩み、婦人科を受診すべき症状