病気・治療法・薬の基礎知識を丁寧に解説

2025年8月
  • 立ちくらみやふわふわ感は内科・循環器内科へ

    医療

    立ち上がった瞬間にクラっとする、目の前が暗くなる「立ちくらみ」や、特に回転する感じはないけれど、体がふわふわと浮いているような、あるいは地に足がついていないような、持続的な「浮動性めまい」。このようなタイプのめまいは、耳や脳の局所的な問題ではなく、全身性の疾患が原因となっている可能性があり、その場合は「一般内科」や「循環器内科」が、最初の相談窓口として適しています。立ちくらみの最も一般的な原因は、「起立性低血圧」です。急に立ち上がった際に、自律神経の調整がうまくいかず、脳への血流が一時的に不足することで起こります。脱水や、特定の降圧薬の副作用、あるいは自律神経失調症などが背景にあることがあります。また、心臓そのものの病気も、めまいやふらつきの重要な原因となります。特に注意が必要なのが「不整脈」です。脈が極端に遅くなる「徐脈」では、脳への血流が慢性的に不足し、常にふらふらしたり、失神発作を起こしたりします。逆に、脈が異常に速くなる「頻脈」でも、心臓が空打ち状態になって、結果的に脳への血流が減少し、動悸と共にめまいを感じることがあります。これらの循環器系の問題が疑われる場合、循環器内科で、血圧測定や心電図、24時間心電図(ホルター心電図)などの検査を行います。さらに、ふわふわとした浮動性めまいの原因として、内科で考慮すべき疾患は多岐にわたります。「貧血」で、脳が酸素不足に陥っている場合や、「糖尿病」による神経障害、「甲状腺機能異常」といった内分泌の病気、あるいは服用している薬の「副作用」なども、めまいの原因となり得ます。原因がはっきりしない、ふわふわとしためまいに悩んでいる場合は、まず内科を受診し、血液検査などで、全身的な視点から原因を探ってもらうことが、解決への近道となります。

  • 声がれや飲み込みにくさを伴う喉の痛み

    知識

    喉の痛みに加えて、「声がかすれて、出にくい(嗄声・させい)」、あるいは、「食べ物や飲み物が、うまく飲み込めない、むせる(嚥下困難)」といった症状が、強く現れている場合。それは、炎症が、喉のさらに奥深く、声帯や、その周辺の「喉頭(こうとう)」と呼ばれる部分にまで、及んでいるサインかもしれません。このような症状が見られる場合は、喉の奥を直接、詳細に観察できる、「耳鼻咽喉科」の受診が、強く推奨されます。声がれの原因として、最も多いのが、声帯そのものに炎症が起こる「急性声帯炎」です。風邪のウイルスなどが原因で、声を出すための、左右一対のヒダである声帯が、赤く腫れて、正常に振動できなくなることで、声がかすれてしまいます。喉の痛みや、咳を伴うことが多く、治療の基本は、とにかく声を出さない「沈黙療法」です。炎症を抑える薬の吸入(ネブライザー治療)も、有効です。一方、より注意が必要なのが、喉の痛みと、飲み込みにくさ、そして、声が、まるでジャガイモが口の中にあるかのように、こもって聞こえる「含み声」が、同時に現れた場合です。これは、喉頭の中でも、気道の入り口の蓋の役割をしている「喉頭蓋(こうとうがい)」という部分に、急激な炎症と腫れが起こる「急性喉頭蓋炎」の可能性があります。喉頭蓋がパンパンに腫れあがると、気道を塞いでしまい、窒息に至る危険性がある、極めて緊急性の高い病気です。息苦しさ(特に、息を吸う時)を伴う場合は、夜間や休日であっても、ためらわずに救急病院を受診する必要があります。また、喉の痛みが、片側に非常に強く、口が開きにくい(開口障害)といった症状がある場合は、「扁桃周囲膿瘍」の可能性も考えられます。これは、扁桃炎の炎症が、扁- chí腺の周囲にまで波及し、膿の塊を作ってしまう状態で、声がこもり、飲み込みにくさを伴います。この場合も、切開して膿を出す処置が必要となるため、耳鼻咽喉科での専門的な対応が不可欠です。

  • 逆流性食道炎が原因の咳、消化器内科での治療

    医療

    咳が、2ヶ月以上も、ダラダラと続いている。特に、夜、横になった時や、朝起きた時に、咳き込むことが多い。痰はあまり絡まず、喉のイガイガ感や、声がれを伴うこともある。呼吸器内科で、喘息や肺炎の検査をしても、特に異常はないと言われる。このような、原因不明の慢性的な咳の背景に、実は、胃や食道の病気である「逆流性食道炎」が、隠れていることがあります。この場合、咳の治療のために、受診を検討すべきは「消化器内科」や「胃腸科」です。逆流性食道炎は、胃の中で、食物を消化するために分泌される、強力な酸である「胃酸」が、食道へと逆流してしまう病気です。通常、胃と食道のつなぎ目(噴門部)は、下部食道括約筋という筋肉によって、締められており、胃の内容物が逆流しないようになっています。しかし、加齢や、肥満、食生活の乱れなどによって、この筋肉の働きが弱まると、胃酸が食道へと、簡単に逆流してしまうのです。典型的な症状は、「胸やけ」や、酸っぱいものがこみ上げてくる「呑酸(どんさん)」ですが、全ての患者さんに、これらの症状が現れるわけではありません。逆流した胃酸、あるいは、胃酸によって気化したガスが、喉や、気管の入り口を直接刺激することで、気道が過敏になり、慢性的な咳(咳反射)が引き起こされるのです。これを、「胃食道逆流による咳(GERC)」と呼びます。特に、夜間、横になると、胃酸が重力によって、さらに逆流しやすくなるため、就寝中や、早朝に、咳発作が起こりやすいのが特徴です。消化器内科では、まず、問診で、咳と、食事や姿勢との関連性を、詳しく聞き取ります。そして、診断を確定させるために、「胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)」を行い、食道の粘膜に、逆流による炎症(びらん)が起きていないかを、直接観察します。治療の基本は、胃酸の分泌を、強力に抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:PPIなど)の内服です。この薬を、数週間服用してみて、咳の症状が、劇的に改善すれば、咳の原因が、逆流性食道炎であったと、診断的に治療することができます。また、薬物療法と並行して、脂肪分の多い食事や、食べ過ぎを避ける、食後すぐに横にならない、寝る時に上半身を少し高くするといった、生活習慣の改善も、非常に重要となります。

  • 女性特有のめまい、更年期障害と婦人科

    医療

    40代後半から50代にかけての女性が、原因のはっきりしない、ふわふわとしためまいや、立ちくらみに悩まされる場合、その背景には「更年期障害」が隠れている可能性があります。この年代の女性の体は、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が急激に減少し、ホルモンバランスが大きく揺らぎます。このエストロゲンの減少は、脳の視床下部にある自律神経の中枢に直接影響を及ぼし、そのバランスを乱してしまうのです。自律神経は、血圧や心拍数、体温などをコントロールしている重要なシステムです。このバランスが崩れると、血管の収縮や拡張のコントロールがうまくいかなくなり、血圧が不安定になって、立ちくらみや、ふわふわとしためまいを引き起こしやすくなります。更年期障害によるめまいは、単独で現れることは少なく、多くの場合、他の多彩な症状と共に現れるのが特徴です。代表的なのが、突然顔がカッと熱くなる「ホットフラッシュ」や、大量の汗をかく「異常発汗」です。その他にも、「肩こり、頭痛、疲労感、不眠、気分の落ち込み、イライラ、不安感」といった、身体的・精神的な不調が複合的に現れます。もし、めまいと共に、これらの症状が複数当てはまる場合は、更年期の不調を疑い、「婦人科」を受診することを検討するのが良いでしょう。婦人科では、問診で症状を詳しく聞いた上で、血液検査で女性ホルモンの値を測定し、更年期障害の診断を行います。治療としては、減少した女性ホルモンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」が非常に有効です。HRTは、めまいだけでなく、ホットフラッシュや気分の落ち込みといった他の更年期症状も、同時に改善する効果が期待できます。その他、症状に合わせて漢方薬や自律神経調整薬などが用いられることもあります。年のせいだと我慢せず、専門医に相談することで、つらい時期をより快適に乗り越えることが可能です。

  • まとめ。受診先に迷ったら総合診療科という選択肢

    医療

    これまで、症状別に、様々な専門診療科の役割について見てきました。しかし、現実には、「頭痛とめまいと、肩こりが全部ひどい」「微熱と、腹痛と、気分の落ち込みが続いている」といったように、症状が複数の科にまたがっていたり、どの症状が一番つらいのか、自分でもよく分からなかったりするケースも、少なくありません。あるいは、近所に、適切な専門科のクリニックがない、という場合もあるでしょう。そんな時に、非常に頼りになるのが「総合診療科(総合内科)」という選択肢です。総合診療科は、特定の臓器や疾患に専門を限定せず、年齢や性別を問わず、患者さんが抱える、あらゆる健康上の問題を、総合的な視点から、診断・治療する専門家です。いわば、「病気の探偵」のような存在であり、断片的な症状の中から、隠れた病気の全体像を、見つけ出すトレーニングを積んでいます。総合診療科の医師は、まず、患者さんの話を、時間をかけて、じっくりと聞く「全人的な問診」を重視します。現在の症状だけでなく、過去の病歴、家族歴、生活習慣、仕事の内容、さらには、心理的な背景に至るまで、幅広い情報を集め、それらをパズルのピースのように組み合わせながら、診断への仮説を立てていきます。そして、その仮説を検証するために、必要な検査を、効率的に計画し、実施します。その結果、診断が確定し、治療が可能な場合は、総合診療科医自身が、主治医として治療を継続します。例えば、高血圧や糖尿病といった、一般的な内科疾患の管理は、総合診療科の重要な役割の一つです。一方で、もし、診断の結果、より専門的な知識や技術を要する、高度な治療が必要であると判断された場合には、総合診療科医は、その病気の治療に最も適した、専門診療科(循環器内科、消化器外科、リウマチ科など)の、専門医へと、責任を持って、スムーズに橋渡しをしてくれます。この、医療の「交通整理」と「水先案内人」としての役割こそが、複雑化する現代医療において、総合診療科が果たす、最も大きな役割なのです。どの科に行けばいいか、本当にわからない。そんな時は、一人で悩まず、まず、総合診療科の扉を叩いてみてください。そこから、きっと、あなたの問題解決への道筋が、開けていくはずです。