咳という症状で、どの専門科に行けばよいか迷った時に、最初の相談窓口として、最も一般的で、かつ適切なのが「内科」です。内科は、特定の臓器に限定せず、体全体を総合的に診る診療科であり、咳の原因となる、様々な病気の初期診断(プライマリ・ケア)を行う上で、中心的な役割を担っています。咳の原因として最も多いのは、言うまでもなく、ウイルスや細菌による「急性上気道炎」、いわゆる「風邪」や、「急性気管支炎」です。内科医は、これらの日常的な感染症の診断と治療に、最も精通しています。診察では、まず問診で、咳がいつから始まったか、咳の性質(乾いているか、湿っているか)、痰の有無や色、発熱や喉の痛み、鼻水といった、他の症状について詳しく聞き取ります。そして、聴診器で胸の音を聞き、肺に異常な音がないかを確認します。これらの情報から、医師は、病気の原因がウイルス性なのか、細菌性なのかを推測し、必要な治療(鎮咳薬、去痰薬、あるいは抗生物質など)を判断します。また、内科を受診する大きなメリットは、その「総合的な視点」にあります。咳の原因は、必ずしも肺や気管支だけにあるとは限りません。例えば、胃酸が食道に逆流することで、咳が誘発される「逆流性食道炎」は、消化器系の病気ですが、長引く咳の原因として、決して珍しくありません。また、心臓の機能が低下する「心不全」では、肺に水がたまることで、咳や息切れが生じることがあります。あるいは、服用している薬(特に、一部の降圧薬)の副作用として、咳が出ている可能性も考えなければなりません。内科医は、これらの呼吸器以外の、様々な可能性も常に念頭に置きながら、診察を進めてくれます。そして、もし、より専門的な検査や治療が必要であると判断した場合には、責任を持って、呼吸器内科や、消化器内科、循環器内科といった、最適な専門科へと、スムーズに橋渡しをしてくれる、頼れる水先案内人となってくれるのです。
まず相談すべき「内科」、総合的な視点からの診断