これまで、症状別に、様々な専門診療科の役割について見てきました。しかし、現実には、「頭痛とめまいと、肩こりが全部ひどい」「微熱と、腹痛と、気分の落ち込みが続いている」といったように、症状が複数の科にまたがっていたり、どの症状が一番つらいのか、自分でもよく分からなかったりするケースも、少なくありません。あるいは、近所に、適切な専門科のクリニックがない、という場合もあるでしょう。そんな時に、非常に頼りになるのが「総合診療科(総合内科)」という選択肢です。総合診療科は、特定の臓器や疾患に専門を限定せず、年齢や性別を問わず、患者さんが抱える、あらゆる健康上の問題を、総合的な視点から、診断・治療する専門家です。いわば、「病気の探偵」のような存在であり、断片的な症状の中から、隠れた病気の全体像を、見つけ出すトレーニングを積んでいます。総合診療科の医師は、まず、患者さんの話を、時間をかけて、じっくりと聞く「全人的な問診」を重視します。現在の症状だけでなく、過去の病歴、家族歴、生活習慣、仕事の内容、さらには、心理的な背景に至るまで、幅広い情報を集め、それらをパズルのピースのように組み合わせながら、診断への仮説を立てていきます。そして、その仮説を検証するために、必要な検査を、効率的に計画し、実施します。その結果、診断が確定し、治療が可能な場合は、総合診療科医自身が、主治医として治療を継続します。例えば、高血圧や糖尿病といった、一般的な内科疾患の管理は、総合診療科の重要な役割の一つです。一方で、もし、診断の結果、より専門的な知識や技術を要する、高度な治療が必要であると判断された場合には、総合診療科医は、その病気の治療に最も適した、専門診療科(循環器内科、消化器外科、リウマチ科など)の、専門医へと、責任を持って、スムーズに橋渡しをしてくれます。この、医療の「交通整理」と「水先案内人」としての役割こそが、複雑化する現代医療において、総合診療科が果たす、最も大きな役割なのです。どの科に行けばいいか、本当にわからない。そんな時は、一人で悩まず、まず、総合診療科の扉を叩いてみてください。そこから、きっと、あなたの問題解決への道筋が、開けていくはずです。